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2010年 03月 05日
最近、ファンモーター(冷却ファン)と放熱器にハマっています。
とりわけファンとヒートシンクが一体となったCPUクーラーは、今や極めて多種多様な製品が次々と世に送り出されています。単なる機能部品の域を超え、一種独特な工業デザイン(?)領域に踏み込んでいるものも少なくありません。 ←なんじゃこりゃ?(笑) 私自身ご多分に漏れず(?)、使用目的も決まっていないのに、ついあれこれ買い溜めてしまう始末。車やバイク方面にも蘊蓄のある人間としては、エンジンの排気系を連想させるあの銅色のヒートパイプにどうしても惹かれてしまいます。 このままじゃ放熱器を使うためにアンプを作らねばなりません。もはやこれは「CPUクーラー萌え」状態と言っていいでしょう(笑)。 (写真は私が持っている現物ではなくイメージ) しかも中古やジャンクが安く出回っていますので、たいへんお得感があります。もはやオーディオアンプも、大艦巨砲主義的にやたらとでかい放熱器を使った、良く言えば贅沢・悪く言えば無駄な自然空冷ではなく、ファンで冷やすのが常識という時代に移行しつつあるのかもしれません。回転音がずいぶん静かなものもありますし、熱が出る時→音量でかい→ファンの音は気にならない、という話もあります。 いずれにせよ、発熱が少ない時はファンの回転数が下がる温度制御にしておけば騒音を抑えることができるわけで、実際、今やPCの内蔵ファンはほとんどがPWM制御です。 というわけで今回のエントリは、ファンモーターのための極めてシンプルかつ実用的な温度制御回路です。 オーディオ用ですから、スイッチングノイズの気になるPWMではなくアナログのシリーズレギュレータ式とします。またそうすることで回路も著しく簡素化できます。 温度センサIC・LM35は、0℃で0V、以後は10mV/℃リニアで摂氏校正された出力電圧(100℃なら1V)が得られる優れものです。抵抗値変化がノンリニアで、しかもバラつきが大きく特性を読むのに実測も必要なサーミスタは、もはや過去の遺物と言わざるをえません。 で、このLM35を使ってファンモーター制御回路を作るとすれば、普通は出力をオペアンプで受けて適当に増幅し、何らかの電圧リファレンスと比較してモーター駆動の電圧なり電流なりを得るところだろうと思います。 が、この回路は、なんと3段ダーリントン・トランジスタ(Q1→Q2はインバーテッドですが;むろん、Q2→Q3を再びインバーテッドにすればQ3にNPNの石を使えます)で電流増幅しているだけです。 バカバカしいほど単純。そんなもん、いちいちネットで公開するな!と言われそうです。 あるいは、次のように思われる方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。「ん? トランジスタのVBEは約0.6Vだから、ファンが回り始める温度は60℃ぐらい? ちょっと高すぎるんじゃないの?」。 ‥‥しかし、それは固定観念というものです。ファンモーターの消費電流は一般に0.1〜0.2A程度ですが、3段ダーリントンで出力電流をそれぐらいに取ると、1段目のVBEは概して0.4V台、LM35の出力に換算すれば40℃台と、出力素子を冷却する上でドンピシャリの数字になります。 しかもトランジスタの一般論として温度上昇とともにVBEは2mV/℃で低下し、hFEは増大する傾向ですから、周囲温度が暑くなるほど早くからファンが回り始める(とは言っても、閾値温度変化/周囲温度変化は0.2℃/℃、つまり室温が10℃上昇しても閾値が2℃下がるだけにすぎませんが)ため、温度補償は不要です。熱暴走しやすいトランジスタの特性が、ここではまったく逆にメリットとなるわけです。 これほど単純な回路でも理論通りの特性が得られるのは、トランジスタという素子ならでは、もっと言えば電子回路の神の采配か(笑)。ちなみにLM35自体も、内部電圧基準はトランジスタの物理特性を利用したバンドギャップ・リファレンスだろうと想像します。 使用する石は、Q3がTo-126以上のパッケージであれば本当に何でもいいのですが、hFEランクには注意が必要です。結論から言えば、できる限りhFEの高いものを選ぶのが吉です。 ※厳密に言うと、Q1はhFEではなくVBEまたは飽和電流(Is;VBE-Ic特性を決定するパラメータ)で選別するべきなのですが、hFEを目安にしても大きな外れはないと思います。 例えば、私は最初、Q1=2SC1815(GR)、Q2=2SA1015(GR)、Q3=2SA1358(Y)で組んでみましたが、とあるファンとの組み合わせでは回り始めが約40℃台後半(@室温20℃)と気持ち高めだったので、Q1/Q2をよりhFEの高い2SC1775A(E)/2SA872A(E)に変えたところ、閾値が数℃下がってより良い案配に‥‥といった感じです。 このあたり、ファンモーターの特性や求める温度との兼ね合いで微調整すべき領域ですが、ほとんどの場合は40〜50℃というアバウトさで実用上まったく問題ありませんから、作りっぱなしでOKでしょう。どうせ周囲温度によって閾値も変化するわけですし。 温度制御の範囲はかなり狭く、回り始めから数℃の温度上昇でQ3は飽和し、ファンもフルパワーとなります。熱結合してフィードバックさせると、回り始め〜フルパワーのどこかでファンの回転数と発熱とがバランスするポイントに落ち着きます(当然ながら、ファンの冷却能力が発熱量を上回っていればの話ですが)。熱結合の時定数によってはオーバーシュート気味にファンの回転が上昇下降を繰り返したり、場合によっては間欠動作になったりすることもあるでしょう(Q3の損失による素子温度変化が正帰還的に作用するとそうなりやすいかもしれません)。 つまりコンパレータやサーモスタットに近い動作をするわけですが、そうは言ってもあくまで非スイッチングレギュレータなので、ファンの消費電流に応じてQ3の放熱を多少は気にする必要があります。もっとも損失は微々たるもの(0.5Wからせいぜい1W)で、たったこれだけのために手間をかけてPWM化するほどの価値は認められません。 なおモーターには逆起電力がありますので、必ずフライホイール・ダイオードかコンデンサを並列に抱かせておきます。 Q1ベースとQ1・Q2コレクタの抵抗は電流制限です。LM35の出力インピーダンスはオペアンプ並に低いので、何らかの理由(サージ等を含む)で高めの電圧が出た時、制限しておかないとベース/コレクタ電流過大でトランジスタが壊れます。もっとも、LM35が温度を正しく測定したがゆえに1Vとか出力する時は、温度検出の対象じたいがすでに逝っているという話もありますが‥‥。 なお回路図中点線で示したQcを追加すれば、電源シャットダウンなどの付加的制御も可能です。閾電流がmA台になるようRpullupの値を決めてやれば、定石通り60℃(VBE=0.6V)ほどでControl出力がLoレベルとなります。
by daluhmann
| 2010-03-05 05:22
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