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2010年 02月 01日
しょーもない(けど実は極めて緻密な)工作、第n弾です。
メーカー製アンプについていたと思しきパワー計のジャンクをゲトしたので作りました。 実際問題、PAの現場で、出力パワーを直接モニタするメーター(ラインレベルを管理するVU計ではなく)が欲しいと思っていたのも事実なので。 60Wスケールなので、×10レンジも設けて600Wまでモニタできるようにします。 (私は自宅でもPAでも4Ωのスピーカしか使わないので、パワーは4Ω換算。目盛りの下側に元々描いてある小出力レンジは不採用) まともな人ならオペアンプを使ってピークホールド回路と絶対値(=整流)回路を組むところでしょうが、ここは超原始的に2石ディスクリートで。またディスクリートでないと、電源なしでも動くことは動くという仕様を満たすことは100%不可能です。 J-FETのドレイン電源は、なんと入力信号そのものを使います。そうしないと、入力がない時もFETが微妙にONして次段のTrにベース電流が流れ(FETのピンチオフ電圧>VBEであるが故)、メーターが振れてしまいます。実入力電圧がほぼそのままドレインに加わり、ゲート入力はそれを1/3ぐらいに分圧していますので、その電圧差でFETが動作するわけです(ただし当然、振幅がプラスに振れた時のみ)。 ドレイン電位が0.6Vを超えると、ソースフォロワが0.47uFのピークホールド・コンデンサを素早く(計算では10ms前後)充電します。反応が速いので、音が聞こえるより早くメーターが振れ始めるように感じます。 その溜まった電荷を次段Trのベースにダラダラと放電することで指針をゆっくり戻します。時定数は約1.5s。 なおドレイン直近のダイオードは、整流機能を持つと同時に、ソース電位>ドレイン電位になった時にFETが逆向きに動作して0.47uFが放電してしまうのを防ぎます。ドレイン/ソースを逆さにしても全く同じように動作するFETならでは。 メーターを振るTrフォロワは、信号が途切れた後も指針をゆっくり戻すために電源を電池(006P)で供給していますが、実はこの電池がなくても指針がさっさと戻ってしまうだけでフツーに動作します。電池が切れていても純パッシブでとりあえず実用になる‥‥というのが今回の重要な仕様です。 またPAのような高電圧が突っ込まれた時は、信号を整流して得られた電圧に勝手に切り替わって動作するため電池を消耗しません(長丁場のPA現場では有益な仕様)。やたらとダイオードが入っているのも、そうした切り替えをスムーズに行うためと、平滑コンデンサ(22uF)の漏れ電流による電池消耗を抑えるためです(だから電源スイッチはつけていません)。 またFETのドレインをZDでクランプして電圧制限するとともに2SC2240(VCBO=120Vとそこそこ高耐圧)を使っているのは、数百Wに達するパワーアンプの高い出力電圧に耐えるためです。 アンプの出力に半波整流回路がぶら下がる格好になりますが、十分大きな直列抵抗が入っていること、電流が微少であることから、音の変化を聞き取ることはできませんでした。 DCアンプはこの程度のアンバランスなど屁でもありませんし、管球アンプでも出力トランス2次側のDC電位が微妙にオフセットするだけです。 なお、メーター照明のために5VのACアダプタから電気を供給しているのに、なぜそれを電源にしないでわざわざ電池を使うとかとゆーと、例によってGNDループ問題を少しでも逃れるためです。お遊びのメーターをつないで音が変わってしまっては本末転倒ですので。 ケースは、何年か前のバレンタインデーに貰ったチョコレートの箱です。まるでこのメーターのために作られたのではないかと思うほどピッタリサイズ(笑) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ (以下、2010. 2. 5.付記) その後、メーターの動きを眺めつつ回路を再検討すると、やはりいろいろと問題が見えてきました。 ①0.6Vといえども不感帯がある。また不感帯の存在と、ピークホールド電圧がJ-FETのVgs(ほぼピンチオフ電圧)の分だけ高めになることとが相まって、小音量では指針が全く動かず、ある音量から急に大きく振れるような不自然な動きを示す。 ②数W程度のパワー(に相当する入力電圧)まではJ-FETの飽和領域でなく抵抗領域を使っている(要するにVdsが低い)ため、ピークホールド電圧がゲート入力電圧だけできっちり定まらず、ドレイン電圧によってもかなり変化する。そのため、×1レンジでメーターの校正を行うと、×10レンジに切り換えた時にまるっきり計算(分圧比)通りの指示をしてくれない。言い換えると、×10レンジの切り換えはゲート入力を抵抗分圧で減衰させているだけでドレイン側にはアッテネータが入っていないため、×1レンジよりも3倍ほど高いドレイン電圧での動作となり、数値がかなり高めに出てしまう。 特に②は、PAの現場での実用という目的に照らして不都合なので、どうしても見直しが必要です。 そこで考え抜いた回路です。Trが2石増えて4石になりました。 ■初段にシンク(電流吸い込み)動作が加わったので、この出力でピークホールドのC(0.47uF)を充電することはできない。必然的にもう1段Trフォロワを追加し、そちらでチャージすることになる。 あれ? せっかく初段出力を約0.6V(1Vbe分)嵩上げしているのに、もう1段増えたら不感帯は結局なくならないんじゃないの、という疑問を持つ方もいらっしゃるでしょうが、それに関しては、 ■J-FET/NPN-Trコンプリメンタリのソース-エミッタ間にダイオードを挟んで、出力電位をもう1Vbe分嵩上げする。それによって不感帯をほぼゼロにできる。 これについてはもう少し説明が必要でしょう。 余計な物を全て省き、ダイオードをTrに置き換えて図を描くと、初段と次の2段ダーリントンフォロワは、一種のトランスリニア回路を構成しているとわかります。 とすると、もしダーリントンTrにエミッタ抵抗がないと、トランスリニア原理により i0^2=i1・i2=i2^2/β なので、仮にβ=100とすれば、i1=0.3μA, i2=30μAとなります。実際のところβ>200はあるので、i2も1.5〜2倍程度になるでしょう。 これは、僅かではありますが目で見てわかるほどメーターが振れてしまう電流です。話をわかりやすくするためあえてA級/B級という言葉を使えば、一定のアイドリングを与えたA級動作に相当します。 が、実際には、Q2のエミッタには大きな直列抵抗Rが入っています。私の数学力で計算式を示すのは無理ですが(誰か式を求めて下さい)、Q2の電流が大幅に減少することは明らかです。事実、Q1/Q2の合計電流は実測で3μAほどでした。アイドリングの流れるA級動作でも、不感帯のあるC級動作でもなく、カットオフすれすれのドンピシャリB級バイアス、と言っていいでしょう。 ちなみにこれは高yfsでピンチオフの浅い2SK117だからそうできるのであって、もしyfsが低くピンチオフの深い2SK30ATMあたりを使ったらコンマ数mAオーダーでアイドリングしてしまい、上手く行きません。 今回はメーターで出力を取り出していますが、このエミッタ抵抗Rの両端電圧を見れば、不感帯のない絶対値回路として十分実用になります。 ピークホールドが不要であれば、初段のダイオードを無くして1Vbeの嵩上げのみとし、フォロワも1段で済ませばよさそうなものですが(つまり、ごく単純なワイドラー型カレントミラーにエミッタ抵抗を追加したもの)、現実には1VbeでピンチオフするJ-FETは存在しないので不可能です。 無信号時にほとんど電流が流れないのであれば、ドレインに電池を繋ぎっぱなしでもOKです(フォロワ部まで含めた左右CH合計電流10μA強は、006Pでも1年以上保つ計算)。 もちろん電池がなくても小入力時の動作が不正確になるだけで、指針が大きく振れる領域では正しい数値を示します。 実際に動作させてみると、ごく小さな入力からじわじわと指針が動くのがわかります。自然な動きです。 もちろん、×10レンジも計算通り動作します。 なお回路図に「next CH」の表示がありますが、ここはL/Rの回路を連結しているところです。 なぜ両CHの入力をミックスするかというと、無電源動作時、ミックスしておくほうが平均ドレイン電圧が確率論的に高くなって(Vmix=√V(L)^2+V(R)^2となる)、不感帯を少しでも小さくできるからです。 混合ポイントの手前に22kΩが入れてありますので、チャンネルセパレーションの悪化は全く問題になりません。 完成してしまうと、自宅でもついシステムに繋ぎっぱなしでメーターを凝視してしまいます。やっぱりメーター物って我々のような人種の何かをそそりますな(笑)
by daluhmann
| 2010-02-01 02:31
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